倖田來未はなぜ売れたのか〜その3〜



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君の声

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▲「ツバサ」が04年〜05年にかけてヒットした彼ら。続くこの曲も狙った感動ロックで来た。この曲で楽しめたらアルバムもどうぞ。




倖田來未論、第3回です。
例によって前回、前々回を読んでいないとつながりませんので、先に右の「最新タイトル」をクリックして『倖田來美はなぜ売れたのか?〜その1〜、〜その2〜』を御覧ください。
いずれまとめます。








◆イレギュラーヒット


さて倖田來未に話を戻そう。
ブレイクアーティストはたいていこの4種に分けられるのだが、だとしたら彼女はどこに位置するのであろうか?
この4種のいずれかに彼女を配分するならば、程度の違いはあるものの、これまでは間違いなく両方持っているミュージシャンであった。
デビューから4段ステップで「real Emotion」で頂点に輝き、「キューティーハニー」で2ステップという動きが典型的だ。
そして一度頂点を極めるとその後は波をくり返し衰退する傾向が普通だとしたが、ここでイレギュラーを起こし、現在ドカンといっているということになる。


こういったイレギュラーヒットはいくつか事例がある。
例えばドリカム。「決戦は金曜日」で頂点、「サンキュ」「晴れたらいいね」などで2ステップを踏む中、なぜか「LOVE LOVE LOVE」でドカン。
例えば安室。「Don't wanna Cry」で頂点、「a walk in the park」で2ステップ、そして「CAN YOU CELEBRATE?」。
他にMisia福山雅治など。各人「Everything」、「桜坂」が予想外の大ヒットとなっている。
しかし彼らに共通しているのは、既存のファンが総力を結集させイレギュラーを起こしたということだ。
福山にしろ安室にしろ、これらの曲のヒットまでに十分すぎる知名度を誇っており、そのファンの数からし新たなファンを大規模に開拓せずともイレギュラーが可能だったと考えられる。
つまりこれは頂点を極めた後の再ヒット、すなわち大きく見れば継続2ステップに分類される
ファンの総数は減少した中での再ヒットなので、実際これらの大ヒット曲の後に彼らは大きく見切りをつけられている。
しかし倖田來未は今回明らかに新たなファンを大規模に開拓してブレイクした。
よってこのイレギュラーヒットにも属さない。


ここまででつまり何が言いたいのかと言うと…
倖田來未という人物は、これまで多くのミュージシャンが歩んできた神になる条件を満たしていないのに神になったということだ
だから不思議でなのであり、これを解明しなければならない。ここからが本番だ。





倖田來未が売れた原因


さて、彼女は05年末にめでたくORANGE RANGEに続く神となられた。
しかしここでまず気付いて欲しい。
倖田來未のブレイク曲って何ですか?
倖田來未という名前を知っていても、じゃあちょっと1フレーズどうぞと言われて口ずさむことできますか?

神となった人の曲というのは、通常ファンでない人も、そのミュージシャンに興味のない人でも知っているものだ。
いくらGLAY嫌いな人でも「HOWEVER」や「誘惑」を聞いたことないってことはないだろう。
そう、彼女には神になる条件どころか、ブレイク曲すらないのだ。


ブレイク曲がない…じゃあ何が売れて名前が知れわたったの?
なんと唯一の大ヒット作兼ブレイク作はベストアルバムなのである。(ちなみにシングル売上1位は今でも「real Emotion」)
彼女のファンで今一番多いのは今回のベストアルバムで初めて彼女の曲をじっくり聞いた人で、その人たちはデビューから6年間の軌跡を今一気に聞いている。
言い換えれば、多くの人にとってこのべストアルバムが彼女との出会い、つまり1stアルバムというスタンスにある。
こういったファンにとって彼女はまだ新人、デビュー6年でそこそこ既出だが、全くフレッシュな存在だ。
そこでここぞとばかり、曲の方向、エロカワイイというキャラ、メディアへの露出の仕方など、今までも一定の評価を得てきた項目を一気に放出した。
6年分積み上げてきたものをドバッと流したのだから、あとはきっかけさえあれば一気に一線を超えてしまっても不思議ではない。


じゃあきっかけは何?ブレイク曲ないのに?
そう、普通はここで1曲ドカンときっかけを与える曲を登場させるのだが、今回売れたのはベスト盤…
しかも初動は初登場2位…
ベスト盤に真っ先に飛びつくのは誰…?
…そう、きっかけは100%既存のファンの力だったのだ。
今までのファンの力…となると、これは前述のイレギュラーヒットに属するが、少しパターンが違う分その応用と言える。
既存のファンを中心に広がっていくというのは非常に一般的だが、ベスト盤とは新しいものではなく古いものの寄せ集めのはず。
古いものにでも群がるのはファンのみ…のはずだが、そこに新しいファンも取り込んだ
つまるところ今回の流れは100%古いもので新たなファンをかき集めるという、ある種とてつもなく力押しなきっかけ作りだったのである。
(過去にGLAYがベスト「REVIEW」で似たような戦略をとったが、あれはあくまでも直前に「HOWEVER」「口唇」という大ヒットがあったこそできた芸当。ご存知の通り倖田來未にシングルヒット曲はない。)




これが彼女が売れた直接の原因だとどらごんは考える。
エロカワイイが理解できない!とかそういうのはオイラにゃわからん)
例えるなら、6年間インディーズチャートを荒らしまわり徐々にファンをつけてきたバンドが、その活動を総括するベスト盤をメジャー第1弾としてリリースした、みたいな感じで、これまでにない動きでもある。
6年間の内容の濃さを持ちながらデビュー1年目並に強い露出となるので、強力なのも当然である。
…こう考えると今回のブレイクは別に不思議なことでもなんでもない。
彼女は既存ファンを利用するイレギュラーヒットを応用した手法でブレイクし、今やっと神4段ステップを駆け上った頂点にいるだけのことだ。
ただこの状況を作り出すお膳立てが今までにない見事なものだったため、ずっと見守ってきたどらごんは右往左往してしまった。
その準備段階も検証しなければなるまい。




その4に続く