倖田來未はなぜ売れたのか〜その4〜
今聞いてる曲
- アーティスト: オムニバス,飯田圭織,前田有紀,セクシーオトナジャン,エレジーズ,プリプリピンク,モーニング娘。,エコモニ。&モーニング娘。,DEF.DIVA,安倍なつみ,後藤真希
- 出版社/メーカー: アップフロントワークス(ゼティマ)
- 発売日: 2005/12/21
- メディア: CD
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しつこく倖田來未論第4回です。
その1〜その3を読まないと話が続きませんので、まだの方は右の『最新タイトル』をクリックして昨日までの記事を先にお読みください。
第4回の今日は、売る状況作りのための下準備を考察しています。
◆お膳立て1〜空虚の人気〜
今までも言ってきたように、彼女には中級ヒットはあれど、大ヒット曲はない。
そしてステップ的にもブレイク期にあたらないはずなのだが、今になってファンを中心にベスト盤の需要が高まり大ブレイクした。
この原因の一つに空虚の人気の構成、という1つのお膳立てがある。
空虚の人気、つまりなんとなくイイという見せかけのうまさだ。
見せかけさえうまければあとは宣伝の仕方でなんとでもなる世界であるため、これは最重要項目、よって誰もが欲しがるものである。
この見せかけを作る基本的な方法が、テレビタイアップなどによる宣伝だ。
別にいい曲でなくとも、これまでに実績がなくとも、ゴールデンのドラマ主題歌になれば見せかけので売れるというのが例だが、彼女はこれをもっとワイドな形で行った。
彼女はこれまでそこそこ売れていた人であったが、大ブレイクには至ってなかった人物である。
そしてその流れで完全な中堅アーティストとしての道を歩んできたが、ここに来て今までのファンが一気にベスト盤に群がり大ブレイク…。
ではなぜファンが群がってついにはブレイクアーティストになったのか?
これはこの空虚の人気が少なからず関連している。
これまで彼女はそこそこのヒット曲を出してきてはいるが、これ!というものがないアルバム主体の形式を取ってきており、一言で言えば中途半端な存在だった。
需要はそれなりにあったもののそれに見合う器がこれまでなく、それが故に今回ファンがベストアルバムに群がったと見て間違いない。
つまりなんとなくイイ人がベストを出すぞ、という空虚な人気である。これが1つ。
そしてその人気に従って追加的に形成されたもう1つ空虚な人気が、これまでもずっとそれなりに大ヒット曲を連発してきたすごい人、というものである。
これなら大ヒット曲がなくても大ブレイクが可能だ。
今思えば中途半端な存在というのも仕組まれていたのかも知れない。
こうして空虚な人気を蓄積してきたのを全然読めていなかった。
◆お膳立て2〜次世代の戦略〜
そしてもう一つのお膳立て、それはやはり積み重ね型神4段ステップだった。
しかもこれがただのステップではない。
なんとアルバムに的を絞った4段ステップだった!
2nd「grow into one」で世間に登場、3rd「feel my mind」でヒットとなり、4th「secret」が大ブレイク、そして今回更に「BEST」を積み重ねた。
これはまるっきりORANGE RANGEの「上海ハニー」→「ミチシルベ」→「ロコローション」→「花」と同じだ。
完璧にやられた…。
エイベックスは僕らより2まわりほど大きな視点でヒットの作り方を見ていた。
世間どころか、このどらごんにさえ気付かれぬように、思いっきり神になる条件を揃えてるじゃないか…。
そしてアルバム主体だからこそ、今回のベストアルバムを6年かけて作り上げた1作目と割り切った。
「BEST〜first things〜」とはそういうことだったのか…。
でアルバム主体だからこそ、シングルなんか12週連続リリースくらいしちゃって、そしてその12曲を含んだ2作目を出そうとしている。
3/8ニューリリース「BEST〜second session〜」。完敗。
みんなが考えている「話題性狙い…」ということ以上に、もっと大きな視点でこの12週連続リリースには重要な意味があることもおわかりいただけるだろう。
これはただ単なる売り方のうまさに留まらない。
CDはベスト盤的なものしか大ヒットしない、音楽配信も気に入った曲だけを取っていくという近年の傾向まで見事に先読みしての営業だ。
ここまで先読みの戦略を立てられてしまうと、買い手にはもう成す術がない。
ポルノや平井堅、中島美嘉のベストリリースもなかなかの戦略だったが、彼らはあの程度売れて当然の人たちだ。
また05年は倖田來美の他、コブクロ、ジャンヌダルク、Crystal Kay、BENNEI K、ケツメイシなどデビュー6年目ほどのミュージシャンが盛況だったが、彼らは実もあったしその分動きも読めた。
それに比べ、空虚を最大限に膨らませた見せかけの人気で購買欲をそそり、なおかつ細かにブレイクの手順も踏むことで平井堅並のミュージシャンに仕立て上げたこの売り方は、もはや見事以外に言葉が見つからない。
◆まとめ
さて完結に倖田來美が売れた理由をまとめてみると、つまりこういうことになる。
【空虚の拡大を最大化しファンを一気に群がらせ、それにつられて新たなファンを拡大した:デビュー作のようにベスト盤をリリース。内容は6年間の積み重ねを一気に放出】
【そのお膳立て】
一.神になる(大ブレイクする)4段ステップの条件を満たしている。
→徐々に人気がついてきた→但しシングルヒットではなくアルバムで段階を踏んだ
一.時代の先を見越した企業戦略
→ベスト盤的なCDが好まれる風潮を事前に察知→空虚の拡大もそれに合わせる
一.もちろん潜在能力も
→エロカワイイというフレーズ→ターゲットである女性に好まれるキャラ
このようになると思われる。
全く頭が上がらない。すごすぎる…。
その5に続く