LOVE COOK/大塚愛

LOVE COOK(通常盤)

LOVE COOK(通常盤)

LOVE COOK 05'12/14 1位


 シングル「SMILY/ビー玉」「プラネタリウム」が大ヒットを記録し、ファン層が格段に広がった中でリリースされた3rdアルバム。NANAへ提供された「Cherish」も収録され、内容も充実している。


【収録曲】
1.5:09a.m. 2.羽ありたまご 3.ビー玉 4.SMILY 5.U−ボート 6.ネコに風船 7.Cherish 8.ラーメン3分クッキング 9.東京ミッドナイト 10.プラネタリウム 11.Birthday Song 12.LOVE MUSiC


【長所】
▲全ての準備が整った中でリリース
 シングル「SMILY」がスタートダッシュの大ヒット、社会現象にもなった「NANA」へ名曲を提供、そして「プラネタリウム」が若者に人気のドラマ主題歌としてロングヒットを記録し、ファン層が格段に広がった彼女。本作はそうして完全に勢いに乗った中、もう何をしても許される雰囲気の中でリリースされた1枚。内容を見る前に既に、多くの人にとって即ゲット、期待の作品であることが決定しているだろう。そのイメージは是非プラスに生かして欲しい。
▲豊富な注目曲
 シングルはもとより、NANA提供の「Cherish」、CM曲の「U−ボート」、はっちゃけてる「ラーメン3分クッキング」など、曲目を見ただけで内容が充実しているのがわかる。つまり聞く前のスタンスからしてリスクの少ない作品であり、聞きやすさに繋がっている。
▲内容も無難に◎
 外枠だけではなく、中身も期待通り。上記の注目曲が大事なところでちゃんと決めてくれ、またその他の曲にもヤバさは見られず無難にまわしている。イントロっぽく「5:09a.m.」で始まり、少しずつ盛り上げ「SMILY」でガツン、「Cherish」など核曲が中だるみを許さず、終盤は「プラネタリウム」、ラストは大円団「LOVE MUSiC」で終了。基本は忠実に抑えつつも、緩急があり楽しい理想的な組合せが見事である。
▲とにかく期待に応えた
 多くの人がこのアルバムに期待したことは恐らく全て実現されている、そのくらい計算高く、また何気ない内容である。はっちゃけた楽しさ、切ないバラード、元気に前進する曲、時に大きな優しさを感じさせてくれる曲も健在。少しでも彼女に興味のある人なら、絶対に期待を裏切らない、恐るべき聞きやすさを誇る1枚であることを保障する。



【短所】
▼物足りなさはどこ?
 完成度、イメージ、聞きやすさなど、とにかく求むものの多くが揃いに揃ったアルバムなのだが、何回か聞いているとなぜか物足りなさを感じてしまうことがある。決して綺麗過ぎる内容というわけでもないのになぜ退屈してしまうのか。その原因は恐らく曲の質だ。聞きやすさはあれど、単純に曲のレベルが低いのである。メロディーにしろフレーズにしろ、どの曲も面白味こそあるものの、独自のズバッした切り口がない音の羅列になってしまっている感がする。この点では前作、前々作より劣る。
▼終盤に楽しみがない
 最後までうまく整っているというよりか、終盤は最後までなんとか繋げたという感じが否めない。シングル「プラネタリウム」も単調すぎると言えば単調すぎる。個人的には「ラーメン3分クッキング」の終わりくらいから先は聞く気が失せる。
▼もう一曲入れて欲しかった
 ヒット曲や話題曲の駒が適度に揃い、曲順もカンペキと、非常に余裕が感じられる作品だが、欲を言えばもう一曲c/w曲でよかったので入れて欲しかった。出し惜しみのイメージがどうしても拭えないのが一つあるし、アルバムとしてもマイナスになることはなかったと思う。


【おすすめ曲】
2.羽ありたまご
 このアルバムの中で唯一、いつもの彼女以上の力を感じた力作。生きる力を歌ったミディアムバラードで、サビの部分は偶然でもこんなイイ曲を生んでくれた彼女に感謝したくなったくらいだ。2曲目でバラードとこのアルバムの中ではイレギュラーな存在となっているのだが、恐らく何曲目にあろうとこの曲は輝いていたと思う。
7.Cherish
 大塚愛という人の曲と言えば「さくらんぼ」や「SMILY」など元気な曲の方が似合ってるというイメージがあるかもしれないが、曲としてはシリアスでスローめなナンバーの方が格段に出来が良い。この「Cherish」という曲はその彼女のいい部分を一番引き出している代表曲だろう。NANAのトリビュートアルバムでもラストに収められていただけあって、なかなかズシンとくる1曲。聞き流さないように。
6.ネコに風船
 シングル曲ではパッとしなかったというのが正直なところだが、アルバムでは6曲目というじっくり聞ける箇所に配置されたのが吉と出た。他の曲に比べキチンと大塚愛自身を表現できている、背伸びをしていない感じがたまらなく好印象だ。
8.ラーメン3分クッキング
 これまでで言えば「ポンポン」「石川大阪友好条約」みたいな、彼女がアルバムに毎回1曲入れてくるおふざけ曲。内容はどうでもいい歌だが、そのどうでもよさはある意味必需品。単純に楽しい曲でもあるし、何よりちゃんと曲が3分きっちしで終わるのがグッジョブ。


【総評】 A
 多くの人の期待にしっかり応え、大衆ヒットアルバムとしてはこれ以上なくカンペキ。曲レベルの低さを全部ではないが全力を持ってカバーした点が見事だ。「羽ありたまご」や「Cherish」のような曲がもう少しあればもちろんSだった。